先進性と市民福祉の視点からの検証が必要
伊那市の新産業技術推進事業は、全国的にも先進的な取り組みとして注目されており、国の要人や他自治体からも高い評価を受けています。一方で、こうした事業が伊那市民の暮らしにどのような恩恵をもたらしているのか、市民福祉の向上につながっているのかという視点での検証が欠かせないと感じています。
費用対効果が問われるモバイルクリニック事業
まず、モバイルクリニック事業についてです。令和元年度に車両整備が行われ、翌年度から運用が始まりましたが、令和6年度の受診者は200人にとどまりました。稼働日数から見ると、1日当たりの受診者は約1.5人です。維持管理費は年間およそ1,500万円で、受診者1人当たりの経費は6万円以上になります。これまでの導入や機器整備などに要した費用は約1億3,000万円に達しており、職員の人件費は含まれていません。費用対効果の面で大きな課題があると言わざるを得ません。
こうした中、妊産婦向けとして2台目の車両を約4,000万円で整備する計画が進められていますが、昨年度の妊産婦健診の利用者は55人でした。妊産婦の負担軽減策としては、移動に対するタクシー補助やヘルパー支援など、より経費を抑えた方法も考えられます。モバイルクリニックでなければならない理由が、必ずしも明確とは言えません。
また、高度医療機器は定期的な更新が必要となり、その費用は将来的に全額市の一般財源で負担することになります。国の交付金に頼った事業には限界があり、数年後を見据えた検討が必要です。
モバイル関連事業全体の活用状況と今後の見直し
次に、モバイル公民館とモバイル市役所についてです。利用者数はいずれも目標を上回っていますが、内容を見ると、子ども向け事業や各種申請手続きが中心です。オンライン講座やデジタル申請など、より低コストで対応できる手段もある中で、数千万円をかけて車両を整備する必要性については慎重な検証が求められます。
さらに、モバイルオフィスはワーケーション利用を目的に導入されましたが、稼働は年7回・52人と低調です。約3,400万円を投じた事業としては、十分に活用されているとは言い難く、今後は移住定住や観光など、新たな活用方法を含めた見直しが必要だと考えます。
新産業技術推進事業は先進的である一方、将来的には市の負担が確実に増えていきます。人口減少と税収減が進む中、市民の皆さんからお預かりしている市税をどのように使うのか、常に検証する姿勢が重要です。事業ごとに効果を見極め、市民福祉の向上につながる施策へと磨き上げていく必要があると考えています。


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