真に強い人とは

生き延びた女性の手記『生かされて。』

私の愛読書の一つに『生かされて。』という本があります。著者はイマキュレー・イリバギザという女性です。1994年にルワンダで起きた大量虐殺を生き延びた女性の手記です。ルワンダの人口の9割を占めるフツ族がツチ族に襲いかかり、100日間で100万人を殺したという、歴史に残る大事件でした。

このとき、著者の家族は無残に殺され、家も農園もすべてを失いました。自分一人だけが生き残ることができたのは、近くの教会の牧師に仲間とともに匿ってもらえたからです。それは、狭いトイレ一室に女性数人で3か月も音を立てずに過ごさなければならないほどの状況でした。しかし、それに耐え抜くことで、彼女は生き延びることができたのです。

「赦し」という強さ

その後、生活のために縁あって国連で働くようになり、落ち着いてから、かつて住んでいた地を再び訪れました。そこで彼女は、家族の遺体と対面することになります。こみあげてくる怒りと戦いながら、その感情を抑えようと努めました。

やがて、今回の虐殺の首謀者が彼女の前に連れて来られたとき、周囲の人々がその男に罵声を浴びせる中、彼女は一人静かにその男の前に出て、その手に軽く触れ、「あなたを赦します。」と言ったのです。

家族や友人、そして幸せを奪った相手に向けるには、通常では考えられない言葉です。「強い人とはどんな人ですか」と問われれば、まさしく彼女のような人こそ真に強い人と言えるのではないでしょうか。

怒りを超えて生きる

感情を表に出し、相手を威嚇することは、人間であれ動物であれ誰にでもできます。しかし、怒りは相手を傷つけ、自分の心を貧しくするだけで、何も生み出しません。怒りを態度に出すのではなく、それを「赦す」という言葉に変えられる人が、真に強い人だと思うのです。

人を赦すことは、とても強い意志と頑丈な心を持っていなければできません。

最近では「○○ハラスメント」という言葉が溢れていますが、これらは本当の意味で弱い人間が怒りを言葉や暴力に変えているだけとも言えます。

現代社会では、怒りを自分の中で消化し、昇華することがますます求められています。むしろそうした対応のできない人は、ふるい落とされていくのかもしれません。
日々、心して過ごしたいものです。

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